笑えない「笑う相続人」


人が亡くなれば、その親族は、普通は嘆き悲しむものです。

一方で、人が亡くなれば、その遺産を誰が相続するのかといった問題も発生します。

日本の場合、遺産を相続する権利が誰にどの順位で発生するかについては、「民法」という法律に定められているのですが、何の因果か巡り巡って、亡くなった本人とはほとんど縁のなかった親族に遺産の相続権が生じてしまうことが稀に、否、そこそこあります。

「なんや知らんけど一度も会うたことのない親戚のオッサンの遺産貰えるらしいで。ウヒャヒャ」

葬式に参列していないどころか、場合によってはその存在すら知らない親族に遺産を相続する権利が転がり込む状況を皮肉って、俗に「笑う相続人」という表現が用いられます。

しかしながら、相続の対象になるのは、なにも預貯金や不動産などの、「プラス」の遺産ばかりではありません。「マイナス」の遺産、つまり借金も相続の対象になるので要注意です。

生前ほとんど縁がなかったような親族がのこした借金を、もしも相続しなければならない事態に陥ってしまったら、笑っている場合ではありません。

そんなときはすぐに司法書士へ相談しよう!(と、営業トーク)

さて、ここ数年、わたしの事務所では、認知症等で判断能力の衰えてしまったお年寄りの成年後見人を務める機会が多くなりました。

ただ、なにぶん相手はお年を召された方のこと、幾許もなくお亡くなりになってしまうこともあります。

ご本人が亡くなれば、成年後見人は役割を終えますので、速やかに相続人に遺産を引き継がなければなりませんが、いざ戸籍をたどって親族関係を調査してみると、生前のご本人とは全く面識のない親族が相続人として出現することがあり、つまり「笑う相続人」に対して「実はあなたたちが相続人です。通帳を引き取ってください(超意訳)」などと連絡をとらないといけないわけで、これがなかなか神経をすり減らします。

だってね、ある日突然、司法書士を自称する謎の人物から、名前も聞いたことがない親族の遺産を受け取れなどという内容の怪しげなお手紙が届くわけですよ。

このご時世ですから新手の詐欺と間違われてもおかしくありません。オイラ怪しいもんじゃないよ!と必死のアピールが必要となります。

それでもまだ、「プラス」の遺産だけがのこっているならば、最終的には「笑って」遺産の引き継ぎに応じてもらえるからいいのです。

実は私が成年後見人を務めたケースでは、これまでに何度か、ご本人が亡くなった時点で「プラス」の遺産を上回る「マイナス」の遺産がのこってしまったことがあり、このうちの1件は、生前ご本人とは全く面識のなかった異父兄弟に対して「実はあなたたちが相続人です。借金を引き取ってください。それが嫌なら家庭裁判所での相続放棄を検討してください(超意訳)」と連絡をとらねばなりませんでした。

ますます相手に架空請求か何かではないかと疑われてしまいます。

身に覚えのない架空請求に対しては「無視して連絡をとらないこと」が鉄則なのですが、今回ご紹介したようなケースで、わたしの「お手紙」がお粗末なばかりに架空請求と間違われて黙殺されてしまったら、最悪の場合、相手の相続放棄の機会を奪ってしまうことになりかねません。

日本語ノ文章能力ッテトッテモ大切デスネ。

以上、「笑う相続人」は必ずしも笑っていられないというお話、なのかな。

評議員 林 徹

カテゴリー: 報告 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です